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昨日、たまたまテレビをつけた時にやっていたNHKの「ディープピープル」という番組の最後の10分弱くらいを見た。
鈴木大地さん、中村真衣さん、古賀淳也選手という背泳の元選手と現役選手が3人でしゃべっていたのだが、ちょうどウェイトトレーニングの話をしていた。
女子背泳の第一人者だった中村真衣さんは、
「結局は男になれば勝てる!と思って、男なみの筋肉をつけようとウェイトトレーニングをガンガンやっていた」
という。
それに対して唯一の現役選手である古賀淳也選手は、
「ウェイトトレーニングはやらない。理想の泳ぎをしていれば、使われるべき筋肉が使われているのだから必要な筋肉は鍛えられるはず。だから理想の泳ぎを追求することだけに専念したい」
という意味のことを言っていた。
たまたま見た番組で録画もしていないので、正確な言葉ではないが、大意は間違っていないと思う。
僕が以前「ボクサーのウェイトトレーニングについて」で書いたことは、古賀淳也選手の考えにとても近いものだと思う。
競技は違うが現役のトップアスリートが似たような考えを持っていることを嬉しく思った。
僕が「大部分のボクサーにとってウェイトトレーニングは必要ない」という考えに至ったのは、実はある本の影響が大きい。
1980年代末~90年頃に刊行された、高岡英夫氏の「鍛錬シリーズ」だ。
中でも、「鍛錬の方法 世界最強をめざす人だけが読む本」(恵雅堂出版)という本では、井岡弘樹さんの例を挙げて、ボクサーのウェイトトレーニングを扱っていたので興味深く読んだ。
当時の高岡英夫氏の著作はどれもものすごく難解だったので、多分書いてあることの2割くらいしか理解できていないと思うけど・・・。
自分なりに高岡氏が書いていることを要約してみようと思う。
井岡弘樹さんは、タイのナパ・キャットワンチャイ選手と三度戦った。
井岡弘樹選手とナパ・キャットワンチャイの初戦は引き分け、二戦目は僅差の判定負けだった(ラストラウンドに疑惑のゴングはあったがそれまでの内容・採点は僅差だった)。
この時点で、井岡選手とナパ選手のボクシングの実力はほぼ互角に近かったはず。
ナパとの二戦目の後、井岡選手はスポーツ科学の権威の大学教授の指導を仰ぎ、恐らく日本のボクサーとしては初めて本格的なウェイトトレーニングを導入した。
一方、ナパは今まで通りボクシングの伝統的なトレーニングだけを行っていた。
半年後に三度目の対戦をした時には、一方的な展開でナパが井岡選手をKOした。
これは、二戦目から三戦目の半年の間に、ナパと井岡選手のボクシングの実力差が大きく開いてしまったことを意味する。
その理由として、高岡氏は、
1.新しいトレーニングを導入したことで、ユニティ(アスリートが全能力を発揮するための全体として調和した構造)が崩れた。
ユニティを再編するためには、短く見積もっても1年から3年は必要で、半年という期間は短かすぎた。
2.井岡選手のハートは、本来の課題(ボクシングの戦術・動作を徹底的に鍛錬すること)を徹底鍛錬する道程を僅かに外れて、科学的トレーニングの方向へ引き込まれてしまっていた。
3.トレーニングを処方したスポーツ科学者には「ラフパワー」(粗制的パワー)しか見えていなかった。
本来は、「レフパワー」(精制的パワー)を鍛えるウェイトトレーニングをする必要がある。
(要は、科学的ウェイトトレーニングで鍛えた「ラフパワー」がボクシングの動作につながらなかったということだろうか?)
という3つを挙げている。
これを読んでから、「大部分のボクサーにウェイトトレーニングは必要ない!」という僕の考えが決定付けられたのではないかと思う。
ウェイトトレーニングをするなら、上記3つの井岡選手の失敗の原因を除去するために、
1.ウェイトトレーニングを導入してから1年から3年は大きな試合はしない
2.重いバーベルを挙げることに熱中するのではなく、このウェイトトレーニングがボクシングにどう役立つのかを常に意識しながらトレーニングする
3.「レフパワー」を鍛えるウェイトトレーニングを教えられる指導者の指導を受ける
ということが必要だろうと僕は思う。
そしてその3つを満たすのはものすごく困難なことだ(特に1と3)。
だったら、いっそのことウェイトトレーニングはしない方がいいと僕は思うのだ。
ただ、高岡氏も、ウェイトトレーニングが全く無駄と言っているわけではなく、井岡選手のウェイトトレーニングについて、
高岡氏の「予言」通り、井岡選手は1991年に、名王者・柳明佑からジュニアフライ級のタイトルを奪ったのだった・・・。
高岡英夫氏は、現在は「ゆる体操」の指導者として脱力の重要性を説いており、とても読みやすい平易な(それでも奥は深そうだが)本も多数書いている。
また、「体軸」や「正中線」などを「身体意識」と名付け、それを鍛える方法も公開している。
テレビに出たのを見ると少し「痛い人」に見えることもあるが、ボクサーにとっても参考になる点は多いはずだ。
一度書店で手にとって見て、参考になりそうなら一読を勧める。
今日は井岡弘樹さんの甥、井岡一翔選手の日本タイトルマッチか。
時間が経つのは早いものだ・・・。
最後に、「結局は男になれば勝てる!と思って、男なみの筋肉をつけようとウェイトトレーニングをガンガンやっていた」という中村真衣さんには、同じ高岡英夫氏の鍛錬シリーズ「鍛錬の実践」から、こんな言葉を贈りたい。
鈴木大地さん、中村真衣さん、古賀淳也選手という背泳の元選手と現役選手が3人でしゃべっていたのだが、ちょうどウェイトトレーニングの話をしていた。
女子背泳の第一人者だった中村真衣さんは、
「結局は男になれば勝てる!と思って、男なみの筋肉をつけようとウェイトトレーニングをガンガンやっていた」
という。
それに対して唯一の現役選手である古賀淳也選手は、
「ウェイトトレーニングはやらない。理想の泳ぎをしていれば、使われるべき筋肉が使われているのだから必要な筋肉は鍛えられるはず。だから理想の泳ぎを追求することだけに専念したい」
という意味のことを言っていた。
たまたま見た番組で録画もしていないので、正確な言葉ではないが、大意は間違っていないと思う。
僕が以前「ボクサーのウェイトトレーニングについて」で書いたことは、古賀淳也選手の考えにとても近いものだと思う。
競技は違うが現役のトップアスリートが似たような考えを持っていることを嬉しく思った。
僕が「大部分のボクサーにとってウェイトトレーニングは必要ない」という考えに至ったのは、実はある本の影響が大きい。
1980年代末~90年頃に刊行された、高岡英夫氏の「鍛錬シリーズ」だ。
中でも、「鍛錬の方法 世界最強をめざす人だけが読む本」(恵雅堂出版)という本では、井岡弘樹さんの例を挙げて、ボクサーのウェイトトレーニングを扱っていたので興味深く読んだ。
当時の高岡英夫氏の著作はどれもものすごく難解だったので、多分書いてあることの2割くらいしか理解できていないと思うけど・・・。
自分なりに高岡氏が書いていることを要約してみようと思う。
井岡弘樹さんは、タイのナパ・キャットワンチャイ選手と三度戦った。
井岡弘樹選手とナパ・キャットワンチャイの初戦は引き分け、二戦目は僅差の判定負けだった(ラストラウンドに疑惑のゴングはあったがそれまでの内容・採点は僅差だった)。
この時点で、井岡選手とナパ選手のボクシングの実力はほぼ互角に近かったはず。
ナパとの二戦目の後、井岡選手はスポーツ科学の権威の大学教授の指導を仰ぎ、恐らく日本のボクサーとしては初めて本格的なウェイトトレーニングを導入した。
一方、ナパは今まで通りボクシングの伝統的なトレーニングだけを行っていた。
半年後に三度目の対戦をした時には、一方的な展開でナパが井岡選手をKOした。
これは、二戦目から三戦目の半年の間に、ナパと井岡選手のボクシングの実力差が大きく開いてしまったことを意味する。
その理由として、高岡氏は、
1.新しいトレーニングを導入したことで、ユニティ(アスリートが全能力を発揮するための全体として調和した構造)が崩れた。
ユニティを再編するためには、短く見積もっても1年から3年は必要で、半年という期間は短かすぎた。
2.井岡選手のハートは、本来の課題(ボクシングの戦術・動作を徹底的に鍛錬すること)を徹底鍛錬する道程を僅かに外れて、科学的トレーニングの方向へ引き込まれてしまっていた。
3.トレーニングを処方したスポーツ科学者には「ラフパワー」(粗制的パワー)しか見えていなかった。
本来は、「レフパワー」(精制的パワー)を鍛えるウェイトトレーニングをする必要がある。
(要は、科学的ウェイトトレーニングで鍛えた「ラフパワー」がボクシングの動作につながらなかったということだろうか?)
という3つを挙げている。
これを読んでから、「大部分のボクサーにウェイトトレーニングは必要ない!」という僕の考えが決定付けられたのではないかと思う。
ウェイトトレーニングをするなら、上記3つの井岡選手の失敗の原因を除去するために、
1.ウェイトトレーニングを導入してから1年から3年は大きな試合はしない
2.重いバーベルを挙げることに熱中するのではなく、このウェイトトレーニングがボクシングにどう役立つのかを常に意識しながらトレーニングする
3.「レフパワー」を鍛えるウェイトトレーニングを教えられる指導者の指導を受ける
ということが必要だろうと僕は思う。
そしてその3つを満たすのはものすごく困難なことだ(特に1と3)。
だったら、いっそのことウェイトトレーニングはしない方がいいと僕は思うのだ。
ただ、高岡氏も、ウェイトトレーニングが全く無駄と言っているわけではなく、井岡選手のウェイトトレーニングについて、
半年でナパ選手に勝つためにはまったく無意味だったと断言できますが、二年後に一階級上のジュニアフライ級でタイトルに挑戦するためと考えれば、成功への一路程として捉えることもできるのではないでしょうか。と書いている(この本の出版は1989年)。
高岡氏の「予言」通り、井岡選手は1991年に、名王者・柳明佑からジュニアフライ級のタイトルを奪ったのだった・・・。
高岡英夫氏は、現在は「ゆる体操」の指導者として脱力の重要性を説いており、とても読みやすい平易な(それでも奥は深そうだが)本も多数書いている。
また、「体軸」や「正中線」などを「身体意識」と名付け、それを鍛える方法も公開している。
テレビに出たのを見ると少し「痛い人」に見えることもあるが、ボクサーにとっても参考になる点は多いはずだ。
一度書店で手にとって見て、参考になりそうなら一読を勧める。
今日は井岡弘樹さんの甥、井岡一翔選手の日本タイトルマッチか。
時間が経つのは早いものだ・・・。
最後に、「結局は男になれば勝てる!と思って、男なみの筋肉をつけようとウェイトトレーニングをガンガンやっていた」という中村真衣さんには、同じ高岡英夫氏の鍛錬シリーズ「鍛錬の実践」から、こんな言葉を贈りたい。
ラフパワーで勝てるくらいなら競技など止めてしまえ!
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無題
逆に、ゆる体操や身体意識なんてトレーニングをやっていてボクシングが弱くなるって事もありえるでしょうね。
そんな暇があったら一発でもおおくパンチを打った方が良いかもしれません。
まあ、なんにせよサンプルが少なすぎるので、一般論として語るには早すぎる気がしますね。
そんな暇があったら一発でもおおくパンチを打った方が良いかもしれません。
まあ、なんにせよサンプルが少なすぎるので、一般論として語るには早すぎる気がしますね。
コメントありがとうございます。
コメントありがとうございます。
長期間気付かず放置してしまいすみません。
> ラフパワーで勝てるなら、それはそれでいいと思いますよ
> 単純な筋力>競技者の経験・技術という図式はショッキングで面白いです
これは見てる分には確かに面白いですね。
私は、単純な筋力で競技者の経験・技術を上回ってしまえるような競技には、競技としての存在価値に疑問を感じてしまいます。
そんな競技に人生を賭ける価値なんてあるのか?そんな競技止めた方がいいんじゃないのか?と思ってしまうのです。
考え方の違いであり、見てる分には本当に面白いですが。
> 逆に、ゆる体操や身体意識なんてトレーニングをやっていてボクシングが弱くなるって事もありえるでしょうね。
この可能性もありえると思います。
私の現時点の考えでは、ボクシングの練習に集中するべきだと思っています。
その「ボクシングの練習」の質を上げるために、参考になりそうな情報はジャンルを問わず参考にすればよいと思っています。
長期間気付かず放置してしまいすみません。
> ラフパワーで勝てるなら、それはそれでいいと思いますよ
> 単純な筋力>競技者の経験・技術という図式はショッキングで面白いです
これは見てる分には確かに面白いですね。
私は、単純な筋力で競技者の経験・技術を上回ってしまえるような競技には、競技としての存在価値に疑問を感じてしまいます。
そんな競技に人生を賭ける価値なんてあるのか?そんな競技止めた方がいいんじゃないのか?と思ってしまうのです。
考え方の違いであり、見てる分には本当に面白いですが。
> 逆に、ゆる体操や身体意識なんてトレーニングをやっていてボクシングが弱くなるって事もありえるでしょうね。
この可能性もありえると思います。
私の現時点の考えでは、ボクシングの練習に集中するべきだと思っています。
その「ボクシングの練習」の質を上げるために、参考になりそうな情報はジャンルを問わず参考にすればよいと思っています。
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元プロボクサー、現ボクシングファン。
最近はほとんどテレビ観戦(地上波とWOWOW)のみ。
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